相続手続きにかかる費用
1 相続手続きで行うことは様々 2 相続人は誰かを確認するための費用 3 相続財産を確認するための費用 4 相続人が財産の分け方を決めるためにかかる費用:どういう分け方にするのかによって違うのか? 5 遺産分割で決まったことを実行するにあたりかかる費用(専門家への依頼)
1 相続手続きで行うことは様々
相続手続きでは、様々な資料を集めたり、様々な情報を確認したりしたうえで、手続きを進めていかなければならず、当然費用も掛かります。
今回は、その費用がどのくらいかかるのかについて解説をしていきます。
なお今回は、遺言書はなく、相続に関して争いのないケースを前提として解説をします。
2 相続人は誰かを確認するための費用
相続人の調査には標準で数千円、多いときは1万円を超えることもあります。
相続人が誰かを確認するには、被相続人の戸籍を確認して、被相続人の相続人になるのが誰なのかを確認する必要があります。
まずは被相続人の亡くなったことが記載されている戸籍謄本の取り寄せから始めるのが通常です。
このとき、その戸籍自体が除籍(戸籍簿内に全く生きている人がいない状態で、戸籍簿から除かれ、除籍簿に編綴されること)されていなければ、大体450円で取得できます。
一方その戸籍自体が除籍されている場合は、除籍謄本の取得になりますので、750円ほどかかります。
最初の戸籍謄本、又は除籍謄本の取得を皮切りとして、その謄本記載の親族のつながりを求めて、次の戸籍謄本、除籍謄本、又は原戸籍謄本を取得していくことになります。
この作業は、被相続人の出生から死亡までの間に、被相続人とかかわりを持ち、相続人になったものが全員見つかるまで続きます。
かなりの費用と時間がかかることもあります。
万が一相続人の調査に漏れがあると、その後の遺産分割協議は相続人「全員」で行ったことにはならず、有効とならないという結論となります。
そのため、相続人調査により戸籍謄本等の束や、役所の領収証が溜まってきて、これ以上調査をすると1万円を超えるとなったとしても、漏れのないよう相続人を調査する必要があります。
3 相続財産を確認するための費用
場合によっては、かなりの費用がかかることもあります。
相続財産の主なものとしては、不動産、動産、金融資産(預金債権・株式、投資信託)があります。
財産の種類ごとに、それぞれ調査が必要となります。
⑴ 不動産
不動産を公示するのは登記簿であり、登記簿の閲覧謄写、ないし全部事項証明書の取得は、法務局で行います。
この際、1筆の不動産の全部事項証明書は600円かかります。
土地持ちの被相続人ですと、例えば10筆以上の不動産を確認しなければならないので、土地だけではなく建物の調査を含めると費用が1万円を超えることもあります。
なお現在は、「登記情報提供サービス」があり、そこからは「情報」だけは取得できます(一筆330円)。
単なる調査だけで証明までは不要ならば、下調べを「登記情報提供サービス」で行って対象を絞り込み、証明が必要なもののみ全部事項証明書を取得するのが、効率的と考えられます。
また、「名寄帳」という「納税義務者が特定の市区町村内に所有する全ての固定資産(土地や家屋)を、所有者ごとにまとめ、一覧にした台帳」があるので、その名寄帳の取り寄せも有効です。
納税義務者の相続人が取得することができ、1枚200円(~400円)くらいで、物件数が多いと複数枚になります。
ただ名寄帳の記載があるだけでは不十分で、その記載された不動産が登記されているのかどうかを確認する必要があります。
仮に登記されていない場合、権利を移転するには、前提として「表題登記手続」をするなど工夫が必要になります。
このとき、ご自身で登記手続ができれば登記費用自体は数千円程度で済むのですが・・・。
かかる家屋の表題登記は、建物の測量、測量結果に基づく建物図面の作成、その建物図面に基づく登記申請を行う必要があります。
この手続きは、土地家屋調査士の先生が専門で行っており、依頼するとなると8万円から15万円くらいはかかることがあります。
調査により不動産が特定されたとして、その不動産の価値を調査する必要があります。
不動産鑑定を有償で行うこともあります。
不動産鑑定士の先生に依頼すると数十万かかることもあります。
以上、相続人間で不動産の価格について折り合いがつかない場合、価格を決めるために発生する費用になります。
⑵ 動産
動産の場合、動産全体に不動産のような法務局での公示手段がないので、動産ごとに相続財産かどうかを決めていくことになります。
自動車も動産なのですが、登録制度があるので、その登録名義を基準に相続財産かどうかを確認します。
問題は、動産処分費用がどのくらいかかるのか、ということですが、これは動産ごとに違う、という話になります。
相続人の間で価格に争いがあることが前提ですが、自動車の場合、価格を出してもらうのに費用を払うこともなくはないです。
宝石などの貴重品については、鑑定費用が相当掛かる話になります。
⑶ 金融資産
金融資産は、不動産・動産と異なり、通常「金額」が明記されていますので、その価値は一見にして明確であり、不動産・動産のような争いは起こらないと思われます。
ところが、金融資産の中の「株式」「投資信託」については、その財産価値は日々変化し、いつの時点の価値を基準とするのか、ということが問題になる金融資産です。
その価値基準になるのが、株式で言うところの日経平均株価であり、投資信託で言うところの基準価格(投資信託会社が、保有資産の市場価格から算出した価値)です。
またその価値の調査に、相応の費用が掛かることになります。
特に投資信託の基準価格の場合、投資信託商品の中に不動産投資信託が含まれておりますと、その価格の妥当性についての鑑定が行われることもあります。
4 相続人が財産の分け方を決めるためにかかる費用:どういう分け方にするのかによって違うのか?
相続人が、相続財産を分けるためには遺産分割協議を行って分けるのが通常なのですが、今回は、相続に関して争いのないケースということなので、その協議自体に関するコストはかからないと考えます。
では、相続人の一人に全部相続させる場合と、法定相続分で分ける場合とでは、どう違ってくるのでしょうか。
① 相続財産が金融資産のみである場合
例えば金融資産のみである場合、一人の相続人が全額受け取るか、一定の金額を相続人が分けることになります。
その際、かかる費用といえば、遺産分割協議書を作成するための費用(紙、ペン、郵便費用ないし交通費など)、複数人の法定相続である場合は遺産である金銭を動かす際にかかる振込費用等は、ほぼ確定になります。
銀行にお金は払わないで良いのか、という疑問もありますが、現時点では相応のことを依頼しない限り、銀行の方から手数料以上の費用を請求されることはありません。
ただ最近、前提としての口座調査で、取引履歴の取得費用が掛かるようになってきています。
以上の費用が掛かるとして、それは相続人が一人でも複数人でもかかる費用です。
また相続人が複数なら振込費用も少なからず掛かりますが、通常、相続財産を揺るがすほどの費用ではありません。
したがって、相続人の一人全部相続と、法定相続分で分ける場合とで、さほど変わってこないようです。
② 相続財産に不動産がある場合
まずは不動産価値調査について、あまりにも低い価値に設定してしまうと、あとで相続人間でのトラブルのもとになりますので、信用できる業者さんに査定などをお任せするのが良いと思います。
次に、不動産を相続人のうち、誰かが取得するということであればそれはそれで良いのですが(他の売相続人への代償金支払問題、税金の問題は残ります)、誰も取得しないのであれば、売却をすることになります。
ただ相続財産の中には、相応の期間を経た建物、表向きは良いのですが、土地の裏手が少し崩れているような感じがする土地など、なかなか買い手の付かなそうな物件も当然あります。
すると、家屋の改修費用、土地の造成費用などをかけなければ、そもそも買い手が寄り付かない、という話もあります。
こういった改修費用、造成費用は数十万円から、不動産の規模や瑕疵の程度によっては数百万円、1000万円以上かかることもあるので、簡単に解決できる問題ではありません。
このような場合、相続人間で合意をして、相続財産から修繕費用、造成費用などを出して、相続財産の価値回復を図る方法もあるのですが、そこまで合意ができるかどうかが問題です。
仮に、相続財産に現金が少なく、相続人の費用持ち出しで相続財産を修繕、造成する、となると、なかなか苦しい話になります。
費用持ち出しが難しいなら、「修繕・造成が必要な「負」動産(「負」担が想定される不動産を指す)ですが、どのくらいで買取してくれますか?」と不動産業者にお願いする選択肢も出てきます。
確かに、不動産業者さんの買取だと分け前は少なくなりますが、将来税金、費用など、マイナスの負担が増えるより今売っちゃった方が良い、という決断がなされることもあります。
以上から、相続人一人が相続する場合、上記の不動産に関する費用を一人で負担することになります。
相続財産に現金等がない場合、費用は相続人の持ち出しで賄うことになります。
相続人複数の場合は、複数人なのでまだ良さそうに見えます。
ところが複数人の場合に一番怖いのは、費用負担の割合など、不動産売却に関する方針がまとまらないことで、その方針が決まらない限り、不動産の処分は宙に浮き続けます。
そして共通する問題としてはその不動産が「売れない」こと も考えられます。
いずれの場合でも、費用負担について大きな問題点を抱えて動くことになります。
5 遺産分割で決まったことを実行するにあたりかかる費用(専門家への依頼)
相続人間で遺産分割協議書を作成しても、誰がこの内容を実行するのだ、という話になります。
事実上、銀行や法務局に赴く者を決めて、その者を他の相続人がサポートするという形が多いようです。
弁護士に依頼をしておけば、代理人として大体の手続きは行ってくれますので、遺産分割協議の内容を円滑に進めるため、費用が掛かるということになります。
相続税申告が必要な場合には税理士に依頼することになります。
不動産がある場合には、弁護士か司法書士になります。
特に争いはないが、とにかく手続きを行わなければならない金融機関が多いといった場合には行政書士への依頼も検討するとよいでしょう。
また、各専門家が連携して対応してくれる事務所もあります。






























