株や証券口座の相続手続き
1 まずは相続人調査、口座の調査、遺産分割協議が必要
⑴ 上場株式などは相続の対象になる
被相続人(お亡くなりになった方)が上場株式(以下、単に「株式」といいます)や投資信託などの有価証券を保有していた場合、通常それらはすべて相続財産に含まれます。
被相続人の所有に属していた財産はすべて相続財産になるため、土地や建物などの不動産、預貯金といった資産と並んで、株式・投資信託・国債などの金融商品も相続の対象となります。
株や証券口座に限りませんが、多くの相続の手続きにおいては、まず相続人と相続財産を正確に把握することが前提となります。
⑵ 相続人の調査
相続人の調査には、戸籍謄本を用います。
基本的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人の現在の戸籍謄本を収集することで、相続人を漏れなく確認することができます(兄弟姉妹相続の場合や、代襲相続が発生している場合には、このほかにも収集すべき戸籍謄本があります)。
後で行う遺産分割協議は、相続人全員で行わないと無効になってしまうことから、戸籍による相続人の確認は必要不可欠の作業になります。
⑶ 相続財産調査
相続人の調査と並行して、被相続人が保有していた口座を含む相続財産の調査を進めます。
被相続人の自宅にある書類や、証券会社等から送付されてきた残高報告書などから、証券口座が存在する証券会社等を調べます。
最近はインターネットで証券口座を利用しているケースも増えているため、パソコンやスマートフォンの履歴を確認することも調査の一助になる場合があります。
⑷ 遺産分割協議書の作成
相続人と相続財産の調査が終わったら、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは、誰がどの財産を引き継ぐのかを話し合うことであり、株式などについても、相続人全員の合意によって取得者を決める必要があります。
話し合いがまとまったら、協議の内容を記した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名と押印をします。
実務上、押印には実印を用いて印鑑証明書も添付します。
遺産分割協議書は、証券会社における相続手続きの際に必須の書類となります。
2 証券会社等での相続手続き
遺産分割協議書が完成したら、次は証券会社等で具体的な相続手続きを行います。
証券会社等に対して相続が発生した旨の届出を行うと、多くの場合、相続手続きに必要な書類について案内がなされます。
一般的に提出を求められる書類には、以下のものがあります。
①被相続人と相続人の戸籍謄本
②遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明書
証券会社等の所定の書類に、これらを揃えて提出することで、株式などの名義変更や解約の手続きが開始されます。
相続手続きは、証券会社等によって必要書類や進め方がある程度異なることがあるため、事前に問い合わせて確認しておくことをおすすめします。
また、相続人が株式を現物で取得するほか、売却して現金化し、分配することを希望するケースもあります(専門的には、換価分割と呼ばれます)。
このような場合、一度相続人名義の口座へ株式を移管し、相続人自身が売却手続きを行う形になることが多いです。
なお、相続財産に含まれる株式や投資信託は、相続税の課税対象となります。
評価方法は、上場株式であれば「相続発生日の終値」「相続発生日を含む前後3か月間の平均値」など複数の金額から、有利な評価額(最も低い評価額)を選択できます。
投資信託や非上場株式の場合は別途評価方法が定められています。
相続税申告が必要な場合は、相続手続きの際に、相続開始時の残高や評価額の証明書を取得しておくと、スムーズに相続税申告を進めることができます。
3 相続人が口座を作らなければならないこともある
相続人が株式や投資信託を承継する場合、被相続人の口座がある証券会社等に、すでに証券口座を持っていれば、その口座に移管することで手続きは完了します。
しかし、相続人が被相続人の口座がある証券会社等に口座を持っていない場合には、新たに証券口座を開設するよう求められることが多いです。
このような場合、証券口座がなければ株式を移すことができないため、相続人が承継を希望していても手続きが進まないのです。
新しく口座を開設する場合には、証券会社等の所定の手続きをしなければなりません。
相続手続きのタイミングで初めて証券口座を作ることも多いため、手続きに要する期間を見込んで早めに準備することが大切です。
また、相続人が株式をすぐに売却して現金化することを希望する場合でも、いったんは証券口座を開設して株式を移管したうえで売却する必要があります。
売却によって得られた利益については、譲渡所得税が課されるため、確定申告と納税が必要となる場合もあります。
また、相続税の申告、納税が必要であり、納税資金を作る必要がある場合には、期限(原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)までに、売却の準備を計画的に進めなければなりません。
4 株式や証券口座の相続手続きは専門家に依頼しましょう
以上のように、株式や証券口座の相続手続きをするためには、相続人調査、相続財産調査、遺産分割協議、証券会社での手続きなど、いくつものステップを踏んで進めていく必要があります。
名義変更や税申告に関しては専門的な知識やノウハウが求められるため、早めに準備を始め、必要に応じて税理士や弁護士に相談することが安心につながります。






























